畑中 ふうさん

校友の誇り

「一人ひとりの能力を最大限発揮できる社会をつくっていくために」

株式会社PHP研究所 代表取締役社長

清水 卓智さん

(1980年法学部卒業)

山梨出身の僕が、なぜ龍大を選んだかというと、当時の入試では、試験が始まって問題を見てから社会か数学かを選択でき、不得意だった古典も入試科目になかったからです。京都との縁といえば、叔母が室町にある呉服屋さんに嫁いで、池坊さんの近くに住んでいたくらいでした。PHP研究所のことは、高校時代に鎖骨を折って入院していたときに、友人が持ってきてくれた月刊誌『PHP』で知り、入社直前まで松下幸之助が社長だとは知りませんでした。

入社したときに松下幸之助に言われたことは、いまでもよく覚えています。「僕は80歳を超えている。君たちとは違って学歴も小学校だけだ。しかしいまから一斉に月刊誌『PHP』を普及したら、君達には負けない」。なぜかと言うと、知識は大学を出た新入社員の方があるが、仕事は知識でするものではなく知恵でするものだと言うのです。知恵が生まれるのには公式があって、“知識×熱意”なんだと。
入社当時の私が持っていた熱意は、普及成績をあげて上司をギャフンと言わせたいという熱意でした(笑)。当時の上司は非常に厳しい人で、説教に熱が入ってくると、灰皿が飛ぶ。それをうっかりキャッチしてしまうと、余計に叱られる(笑)。

私も入社試験の面接をしますが、最近、就社ではなく、就職したいというように、概念的に物事をとらえる学生が増えたような気がします。「私はこんな仕事をする人間じゃない」「自分なら絶対に売れる本が作れる」とバーチャルの世界では何でもできるように思い込み、根拠のない自信を持っている学生が少なくありません。
面接では、基本的には謙虚さと、会社との相性を見ています。大学でもコミュニケーション能力が大切と指導していると思いますが、面接で5分も会話をすれば分かってしまいます。要は普段から家庭で家族ときちんと話ができているかどうか。できている学生は、面接でも自信をもって話します。
私は、「新人にはぐうの音も出ないほど仕事を与えろ」という主義です。理不尽と思われようが、がむしゃらに仕事をさせる。それが何よりの成長の糧になるんです。新卒入社から5年間の働きを見れば、その社員がどこまで伸びるか分かります。5年間に自分の枠を越えなかった社員は伸びません。これは業界を問わず、どの会社にも言えるのではないでしょうか。

出版業界は厳しい、斜陽産業だなどと言いますが、この業界には自動車業界のようにガリバー企業がいないんです。だから何でもそろう「総合百貨店」的でなくても、キラリと光るいいものを作っていれば生き残っていける。いま世の中が何を欲しているか、何を伝えなくてはならないかを、私ども伝え手がもっと真摯に考えていけば、必ず手に取ってくれる人はいるはずです。
いま、私が関心を持っているのは教育です。「人にはそれぞれ与えられた特質がある。それを最大限に発揮した人生を送れた人が一番幸せ」というのが松下幸之助の考え方です。誰一人として同じ特性を持った人はいない。だからこそ、一人ひとりの能力を最大限発揮できる社会をつくっていくためにどんなことができるのか、PHPは常に考え続けていきたいと思います。
私が以前に脳梗塞で倒れたとき、社員も家族ももうダメだと思ったようです。しかし、奇跡的に復帰した。私が社長に任命されたのは、運が強いからじゃないですかね(笑)。松下幸之助が人を見る時に重視したのは「愛嬌があるか」、「運が強いか」。この二つだけだったと言います。運が強いというのは自分で強いと思わないとダメなんですよ。なんとか次の世代にバトンを渡せるところまで、がんばりたいと思っています。

[広報誌「龍谷」76号より]

清水 卓智(しみず・たかとし)

山梨県出身。1980年法学部卒業。
株式会社PHP研究所入社以来、一貫して月刊誌『PHP』の直販普及活動に専念する。2011年より社長に就任。現在、各種雑誌普及のほか、書籍、通信教育、DVDソフト、eラーニング、映像配信、企業研修など幅広い普及展開を統括。

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