櫻木 厚子さん

校友の誇り

どんな楽曲にも対応できる
安定したプレイヤーをめざしたい

フィンランド放送交響楽団 トランぺッター

櫻木 厚子さん

(2001年 経済学部卒)

オーケストラの中でのトランペットは、圧倒的な存在感で大編成のオーケストラを率いたり、神々しい天井のコラールのようなサウンドを作ったり、繊細でリリカルなフレーズを歌ったり、多彩な魅力があります。

櫻木さんがはじめてトランペットに触れたのは中学生の時。地元高知県の中学・高校で吹奏楽部に所属し大学でも続けたいと、吹奏楽コンクール全国大会の常連である龍谷大学へ進学します。

練習漬けの日々の中で、良きライバルである仲間達と切磋琢磨し合う大学生活は楽しく、3年の終わり頃には“やっぱり続けたい”と音大行きを決意します。当時の吹奏楽部のコーチだった早坂宏明さんに1年間レッスンを受け、京都市立芸術大学にトランペット専攻で進学。その時にはもう“プロになる”と心を決めていたそうです。

京都市立芸術大学では、優秀な仲間に囲まれながら音楽の基礎を学ぶ中で、スウェーデン・イェーテボリ交響楽団の首席奏者であり、世界的なトランぺッターのベンクト・ダニエルソンと運命的な出会いをします。レッスンを受けた際、“この人にもっと習いたい”とベンクトが教鞭をとるイェーテボリ大学に留学を決めます。

しかし、留学を1年後に控えた春、櫻木さんは大きな交通事故を起こします。唇の損傷と下顎の骨折という負傷は、トランペット奏者としては致命的なものでしたが、櫻木さんはリハビリを続け、留学までには簡単な曲が吹けるところまで復活します。その精神力と強さを持って櫻木さんはこの後の人生を切り拓いていきます。

イェーテボリ大学では1年の予定だった留学を2年に延長。さらにはドイツのケルン音大に入学し、学生として学びながらプロに混じって演奏をはじめます。『プラクティカント』と呼ばれる実習生の制度で、ドルトムント歌劇場の管弦楽団とフライブルクの放送交響楽団で1年ずつ経験を積み、ツアーでヨーロッパ各地を回る多忙な中、日本のオーケストラはもちろん、ドイツ、ポルトガル、北欧のオーケストラに、これまでで20回以上のオーディションを受けます。 縁があったのが北欧の名門フィンランド放送交響楽団。現代曲や特にフィンランド出身の作曲家のシベリウスをよく演奏する楽団として地元の人々に愛されているオーケストラでした。

「定年までいられる楽団は初めてなので感慨深かったです。若い人から大ベテランまで幅広い年齢層がいる楽団で、経験豊富な同僚からは刺激を受けます。世界的に有名な指揮者やソリストも来るので毎回違って楽しいです」

才能という目に見えぬ武器だけで異国の地を渡っていくには、相当なタフネスが要求されます。幾多の困難もあったのだろうと想像できますが、櫻木さんはつらかったことについては一言も語りませんでした。その代わり、伝わってきたのは、彼女がトランペットがどうしようもなく好きだということ。

どんな楽曲にも対応できる安定したプレイヤーをめざしたいという彼女の活躍が楽しみです。

[広報誌「龍谷」75号より]

櫻木 厚子(さくらぎ・あつこ)

龍谷大学卒業後、京都市立芸術大学へ進学し、スウェーデンのイェーテボリ大学に2年間留学。その後、ドイツのケルン音大に入学し、ドルトムント歌劇場の管弦楽団とフライブルクの放送交響楽団で1年ずつプラクティカントという実習生としてプロに混じって演奏活動をする。ツアーや日々の演奏の合間を縫ってオーディションを20回以上受け、2009年に北欧の名門フィンランド放送交響楽団に正規メンバーとして入団し現在も活躍している。
2012年、龍谷奨励賞を受賞。

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