松尾 幾代さん

校友の誇り

弱みを活かすことが、
社会を豊かにする

機械系エンジニア

松尾 幾代さん

(2006年 理工学部卒)

「パワー・バリアフリー。年齢や性別に関係なく生活や労働をおこなえる機会を提供し豊かな社会をつくっていく」。これを理念として活動しているのが奈良のベンチャー企業、アクティブリンク株式会社です。体に装着して手足など人間の力をアシストする機器「パワードスーツ」の開発を専門におこなっています。その開発に携わる若き設計者が、松尾幾代さん。アクティブリンク社初の女性社員です(学生時代も機械システム工学科で唯一の女子学生でした)。

「アシストを求めているのは、力に自信がない人。弱い立場の人です。開発中の試着にしても、男性だと重さが気にならなかったり細かいアシスト感を感じにくかったりしますが、私みたいに力仕事が得意じゃない人間のほうが逆に、細かな課題に素早く気づくことができるのかもしれません。そうして従来より動きやすいタイプのパワーローダーライトが生まれました」

すでに開発されていた、力の増幅を目的とした全身型の「パワーローダー」は、スイッチ等で動作切り換えをするのではなく、ロボット自体が人の挙動をセンサで察知して動作し、さらに人も機器の挙動をその瞬間に感じることができる「ダイレクトフォースフィードバック」を特徴とします。ロボットと人の息が合いやすく、ハイパワーで使いこなしやすい一方、重厚すぎて存在感があります。それに対して、扱うパワーは少し落ちるけど、より軽量化し装着しやすくスマートにしたものが「パワーローダーライト」。松尾さんは、開発機器の骨組みを担当。システム担当や、デザイン担当と相談しながら、間接の動きや強度を考え、モーターや歯車を組み合わせて設計しています。

「就職活動のときに、理系技術職というのもあって男性有利な場面を多く感じて。女性で機械設計は珍しくて敬遠されてて『結婚、出産したらどうするの』と聞かれたり、設計じゃなくて設計補助はどうだと言われたり。なにか女性が嫌がられる原因があるんだなと思いました。でも、それを逆に活かす方法を考えて切り込んでいかないと、社会に出て女性の存在をアピールすることさえもできないと思い、自分なりに考えました。どうしても、ものづくりがしたかったので」

最初に勤務した装置機器メーカーには、「自分なら女性ならではの配慮の行き届いた設計ができる」と伝え、受け入れてもらえました。現在の職場でも、弱い立場の人のためのアシスト機器だからこそ、女性の視点や細やかな感性が活かせます。パワーローダーライトも、より「着こなす」という感覚に近づくように改良を続けています。結果、世界が目を見張る技術が生まれたのです。「弱みを活かすことが、社会を豊かにする」と松尾さんは言います。

「自分の弱みにはチャンスが隠れていました。弱みを隅に置き無視したら、社会は改善されません。逆に活かしていけば、世界は良くなっていきます」

[広報誌「龍谷」80号より]

松尾 幾代(まつお・いくよ)

2006年理工学部卒業。学生時代には書道部に所属。神戸の装置メーカー勤務を経て、現在、ロボティクス系機械ベンチャーであるアクティブリンク株式会社設計担当。最先端ロボティクス「パワーローダー」の設計を担い、女性ならではの視点から、小型で軽量の「パワーローダーライト」を生み出す。機械工学分野では希少な女性エンジニアとして、TEDxTodaiでも講演。

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